くろまめです。 宮崎県の山間部で育ちました。 V字の谷から雲の流れを見ていた十代。どんぶり鉢の底に 住んでいるような感じがしていました。 家の向いの山を兄たちは”鉄人28号”と呼んでいました。 今でも”鉄人28号”は勇猛に立ち上がって健在です。 銀鏡(しろみ)は私の原点です。
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全身に日を浴び冬菜抜きにけり
たて書の句点のリズム 月涼し
現るる梁(はり)に手斧(ちょうな)の跡薄暑 (築270年)
母ふたりスマホに座す(おわす)聖五月
母の日や 鯛焼きに並ぶ老紳士
親の手子の手ヒヨコとあそぶ子供の日
幟立つ「ジビエあります」みどりの日
ポン菓子機のバンとこだます昭和の日
エプロンをたたんで村の花見かな
遠来の友と一献野蒜味噌
れんげうや 犬が尾を振るストア前
雨雪の三月十九畑に染み
道祖神なでて小春の六千歩
野面積みの畑に立つ婆雲の峰
万緑や 餅まきの声谺して
日のゆらぐ手水舎 茅の輪くぐりかな (鹿島神宮にて)
卯波立つ同窓会はリモートに
まくなぎやテレビを消せば起きる父
春灯やエレベーターの無音感
リトープスの鉢は手づくりあたたかし
さくらさくら温故知新のつどひかな
ふきのとう嗅げばわらべの欲しがりぬ
東風吹くやつづら棚田に日の残り
春はあけぼの村の祝典ユーチューブ
(2月28日 東米良仁の里 竣工式・銀上の休日)
山あひに呑気に暮らし寒卵
ずんどこ節のかかと落しや冬うらら
唐の酒酌みて李白と秋夜かな
コスモスや庚申塚は無愛想
赤とんぼ止まる石垣野面積
文月や十五のこころ雲に聞き
ひまわりやサイクリストの尻高し
青りんご退部届けを出せずまま
夕虹や電波塔建つ結の村
のどけしや犬がオテするジャンプする
修行僧の掃き目のうねり冴え返る
春雪に包まれてゐる百戸の灯
風光る産婦人科の若き女医
初夢や一富士二鷹山羊生まる
生後九日目草を喰む
山羊の仔の鈴をゆらすや仏の座
初明死んだ友より賀状着く
太鼓一打隠国の神楽始まりぬ
里神楽湯のみを満たす清め酒
天蓋に松明猛る里神楽
夫が彫る遮光器土偶冬ひなた
霧晴るる一叢の里あかりかな
煤焼けの障子の破れ昭和の記
秋の川縄文の石拾ひけり
山羊なくや産土様は霧の中
夫の手につかまりて引く烏瓜
かなかなや先祖累々眠る村
夏雲や白旗あがる銀鏡川
日をしよつて屈めば速き草むしり
飄飄と老ゆる人あり凌霄花
どしゃぶりの雨となりたる山開き
青嵐点滴跡の両の腕
春雲やポストの口の半開き
笑ふつぼ同じ兄妹春夕焼け
初夢の缶のドロップサクマ式
割烹着の袖ととのへて年あらた
黒羽織の背中の家紋叔気かな
学徒兵の無言の誓ひつららかな
一月やV字の谷のVの空
初夢やとなり合はせに座る夫
縁側の湯呑み人肌あきつ飛ぶ
花筒に昨夜(よべ)の雨あり秋彼岸
夏座敷曾孫をあやす父米寿
日日草かしわ手を打つ三つの子 (宮崎県都農神社にて)
手水舎の庇に揺らく晩夏光 (宮崎県都農神社にて)
ねんごろに墓洗ふ父見詰む母
桐の花移住者募る村役場
万緑や先頭を行く押し車
老鶯や西南戦の猛者の墓
夏めくや機のシャトルの滑るなり
更衣して真っ赤なソファ買ひにけり
万緑や青春キップ使い初む
春惜しむ和綴じの本のほつれかな
「巡回中ですこちら交番」春の鳥
こしあんの指なめ上げて春惜しむ
春田打つ影くつきりの白むすび
おとなりに縁談の来る梅の花
春めくや庭木を移す結の村
「結(ゆい)とは、主に小さな集落や自治単位における共同作業の制度である。
一人で行うには多大な費用と期間、そして労力が必要な作業を、集落の住民総出
で助け合い、協力し合う相互扶助の精神で成り立っている。出典:Wikipedia」
けざやかに太鼓とどろき初神楽
一月や堆肥固まる谷の村
元気かと問ふなまはげは同級生
埋火や村の寄り合ひ回り宿
風呂吹や猫の舌持つDNA
沈む日を佇ちて見てゐる十一月
豆を剥く夫のあぐらの小春かな
小春日やほだ木を起こす漢の声
種採りの日付小瓶に書き足して
吠えながら退さる仔犬や秋真昼
山桃酒母のおもひの沈殿す
薪風呂の小窓開ければ秋の色
婆去にし作小屋烏瓜の花
農道の割れたる轍カンナ燃ゆ
金亀子打たれ強きは我が家系
夕立や敷居を跨ぐ猫が見え
竹の秋漱石の本貰ひ受く
春深し茶染みの多き母の椅子
麦を踏む日は天中に谷の村
大股の父と杖つく母の花見かな
三月や緑帯たる石拾ふ
吹墨の絵皿の余白養花天
ジュークボックスの針落つるまで春の夢
鉄棒の順手逆手や初筑波
餅花や系図に養子多かりき
補聴器を確かめ合ふて初電話
しつかりと答へる父よ日脚伸ぶ
冬田道歩めば哲学踏んでいる
直会の果てて熟柿を吸いにけり
秋耕の夫の背中に日の回る
破れ蓮うつしよの音無からしむ
じゆず玉や生命線の上に三つ
焼け縮む腸旨し初秋刀魚
曼珠沙華庚申塚の苔乾び
かうかうと山気降り来る盆踊り
朝顔や土間掃く母の片えくぼ
八月よ疲れおぼゆる日の多き
亡き人の霊(たま)現はるる大花火
肩上げて腰上げて今日初ゆかた
かき氷昭和の色に染まりたる
ベゴニヤを挿して文箱の和紙の色
鹿の子百合耳の良き母疎き父
さなきだにふるさと遠しなすの花
初夏や医師のアナログ腕時計
袋掛終へお岩木山に薄き月
夕薄暑下り電車の発車音
河鹿鳴くいかにおはすか父母よ
春の宵真空管の発光す
人住まぬ家の鶏小屋蠅生まる
春暮るる骨董ラヂオのノイズかな
種芋を植ゑ銭湯の人となる
もも色の布に皿置き彼岸入
山笑ふお尻の痛き滑り台
春浅し薬缶のたぎる音すなり
耕人のひざの継ぎあて新しき
小春日のボールを蹴ってハイタッチ
母が踏むミシンのリズム小六月
身に入むや雨粒つたふ海鼠板
起立礼生徒五人の野菊晴
ならぶれば祖父母にさ似る隼人瓜
神木の大杉消ゆる霧の村
虫の夜や動きののろい晴雨計
コスモスや村の鍛冶屋の昼休み
夏場所や夕餉の時間定まりぬ
母の日の畑より母の初メール
山笑ふブリキの看板ボンカレー
田楽や裸電球点る頃
すかんぽやどの子も短靴長ズボン
翳りゆくものしきたりも又春うれひ
きさらぎや赤糸だけの花ふきん
福寿草三人が暮しつつがなし
初明かり祖父の植ゑたる杉高し
見覚えの父の肩幅四方拝
文化の日鏡に映る黄八丈
そぞろ寒病棟つなぐ自動ドア
馬の背に日のこぼれ落つ十月 (字足らず)
満月やずゐぶん長い坂上がる
秋日影わつぱ蒸篭の干されあり
どんぐりや谷に流るる祝歌 (銀鏡の祝歌「祝いめでた」)
鳥おどし百十一戸の朝ぼらけ (銀鏡)
秋澄むや父の桐下駄白鼻緒 (祝 父へ)
清流やうす緑なる新豆腐 (祝 母へ)
万緑や筆にたつぷり墨つけて (ひろこさんへ)
柿の花生家の棟札現はるる
新しき墓に朱の文字南吹く
両用のめがね忘るる薄暑かな (5月31日)
モノクロのネガかざしみる五月闇
日の中に黒き畝立つ鍬始
薩軍の越えたる峠夏薊(「五郎ヶ越(ごろんこえ)又は「五郎ん峠(ごろんとうげ)」)
ひよつとことおかめになりぬ一夜酒
村おこしの話ふくらむ新茶かな
ほろ酔いがうたふ寮歌や夏の月
水平に遠くを眺め烏の子
いつの間に卆寿の日なり春満月 (祝・達子さんへ )
百坪の端に芋植う母卆寿 (祝・達子さんへ)
百日
隣人の笑顔こぼるるむかごかな (9月23日 ただあきさんとBBQ)
曼珠沙華歩めば土のやはらかし (9月22日「銀鏡神楽ー日向山地の生活誌」出版記念祝賀会)
朝霧の杜に合祀の神楽かな (9月22日 銀鏡神社 祖霊祭)
新任の先生のゐて村祭
足裏の白さ自慢の川遊び
谷わたる風のもつるる祭かな
肩幅広き父の日の父よ
老い母の後ろ手にある冬菜かな
芭蕉忌や見ゆるものあり水の底
新蕎麦や脇往還の水明り
トルソーの肩ににほへる秋夕焼
秋うららミルクキャラメル手から手へ
病院の窓越に見る大花火 (8月13日 術後 利根川大花火)
紫蘇の香や日暮れて空の低くなる
有体に言へば相棒きうりもみ
ランドセルの走れば夏の光かな
俳人のやたら饒舌鶯餅
菜の花や下総起す耕耘機
ドラえもんのシールの跡のあたたかし
菜の花やあやとりの子の祈りの手
わがままを小匙一杯宵の春
節分や一皮脱ぎて鬼となる
水玉の布地に春の立ちにけり
山柿や隣の采の分かる村
てぬぐひのほつれごくぼそいわし雲
やまあひの神楽囃子や秋澄めり (10月「銀鏡神楽習い始まる」)
ちちははに素足を見せる三姉妹
母の日の母の電話のこそばゆし
下萌えを少女ふんはり越えゆけり
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