くろまめの俳句2


17音の日記
48歳の夏、体調を崩したことがきっかけで俳句の本に出合いました。
俳句に出合えて本当に良かったと思っています。

村の中心に銀鏡(しろみ)神社があります。
毎年12月の例大祭には村外で暮らすひとたちが帰ってきます。
「かぐらみーに帰って来たっちゃね。」「盆にも帰って来っちゃろ?」
同郷人同士の合言葉になっています。村の人口210人 世帯数111戸 (2016年1月1日現在)。
銀鏡を詠んでいる句にはを付けています。
銀鏡は私の原点です。
                        俳号 しろみ そら




 2018年  


かなかなや先祖累々眠る村   
夏雲や白旗あがる銀鏡川    日をしよつて屈めば速き草むしり 飄飄と老ゆる人あり凌霄花 どしゃぶりの雨となりたる山開き 青嵐点滴跡の両の腕 春雲やポストの口の半開き 笑ふつぼ同じ兄妹春夕焼け   初夢の缶のドロップサクマ式 割烹着の袖ととのへて年あらた 黒羽織の背中の家紋叔気かな   学徒兵の無言の誓ひつららかな 一月やV字の谷のVの空   初夢やとなり合はせに座る夫

 2017年  

台風や日のあるうちの晩御飯 古写真とおなじメンバー芋煮会 秋夕焼け草刈る婆の腰高し 秋風や猫が敷居を踏み外す 野の花を足して供へる秋彼岸   縁側の湯呑み人肌あきつ飛ぶ   花筒に昨夜(よべ)の雨あり秋彼岸 夏座敷曾孫をあやす父米寿 日日草かしわ手を打つ三つの子 (宮崎県都農神社にて) 手水舎の庇に揺らく晩夏光  (宮崎県都農神社にて) ねんごろに墓洗ふ父見詰む母   桐の花移住者募る村役場   万緑や先頭を行く押し車   老鶯や西南戦の猛者の墓   夏めくや機のシャトルの滑るなり 更衣して真っ赤なソファ買ひにけり 万緑や青春キップ使い初む 春惜しむ和綴じの本のほつれかな 「巡回中ですこちら交番」春の鳥 こしあんの指なめ上げて春惜しむ 春田打つ影くつきりの白むすび   おとなりに縁談の来る梅の花 春めくや庭木を移す結の村   「結(ゆい)とは、主に小さな集落や自治単位における共同作業の制度である。 一人で行うには多大な費用と期間、そして労力が必要な作業を、集落の住民総出 で助け合い、協力し合う相互扶助の精神で成り立っている。出典:Wikipedia」 けざやかに太鼓とどろき初神楽   一月や堆肥固まる谷の村   元気かと訊くなまはげの同級生

 2016年  

お守りにと木の葉をひろふ旅の人 診療所の消灯時間オリオン座   埋火や村の寄り合ひ回り宿   風呂吹や猫の舌持つDNA   沈む日を佇ちて見てゐる十一月 豆を剥く夫のあぐらの小春かな 小春日やほだ木を起こす漢の声   種採りの日付小瓶に書き足して 吠えながら退さる仔犬や秋真昼 山桃酒母のおもひの沈殿す   薪風呂の小窓開ければ秋の色   婆去にし作小屋烏瓜の花 農道の割れたる轍カンナ燃ゆ 金亀子打たれ強きは我が家系 夕立や敷居を跨ぐ猫が見え 竹の秋漱石の本貰ひ受く 春深し茶染みの多き母の椅子 麦を踏む日は天中に谷の村   大股の父と杖つく母の花見かな   三月や緑帯たる石拾ふ 吹墨の絵皿の余白養花天 ジュークボックスの針落つるまで春の夢 鉄棒の順手逆手や初筑波 餅花や系図に養子多かりき   補聴器を確かめ合ふて初電話   しつかりと答へる父よ日脚伸ぶ   冬田道歩めば哲学踏んでいる

 2015年  

少年の腰幣清き里神楽   直会の果てて熟柿を吸いにけり   秋耕の夫の背中に日の回る 破れ蓮うつしよの音無からしむ じゆず玉や生命線の上に三つ 焼け縮む腸旨し初秋刀魚 曼珠沙華庚申塚の苔乾び かうかうと山気降り来る盆踊り   朝顔や土間掃く母の片えくぼ   八月よ疲れおぼゆる日の多き 亡き人の霊(たま)現はるる大花火 肩上げて腰上げて今日初ゆかた かき氷昭和の色に染まりたる ベゴニヤを挿して文箱の和紙の色 鹿の子百合耳の良き母疎き父 さなきだにふるさと遠しなすの花 初夏や医師のアナログ腕時計 袋掛終へお岩木山に薄き月 夕薄暑下り電車の発車音 河鹿鳴くいかにおはすか父母よ 春の宵真空管の発光す 人住まぬ家の鶏小屋蠅生まる 春暮るる骨董ラヂオのノイズかな 種芋を植ゑ銭湯の人となる もも色の布に皿置き彼岸入 山笑ふお尻の痛き滑り台 春浅し薬缶のたぎる音すなり 耕人のひざの継ぎあて新しき

 2014年  

 しぐるるや明かりの点る駐在所  小春日のボールを蹴ってハイタッチ  母が踏むミシンのリズム小六月  身に入むや雨粒つたふ海鼠板  起立礼生徒五人の野菊晴  ならぶれば祖父母にさ似る隼人瓜  神木の大杉消ゆる霧の村  虫の夜や動きののろい晴雨計  コスモスや村の鍛冶屋の昼休み  夏場所や夕餉の時間定まりぬ  母の日の畑より母の初メール  山笑ふブリキの看板ボンカレー  田楽や裸電球点る頃  すかんぽやどの子も短靴長ズボン  翳りゆくものしきたりも又春うれひ  きさらぎや赤糸だけの花ふきん  福寿草三人が暮しつつがなし  初明かり祖父の植ゑたる杉高し  見覚えの父の肩幅四方拝

 2013年  

 初霜や母の寝息の細からず  寒晴れや角とれし友まろき友  文化の日鏡に映る黄八丈  そぞろ寒病棟つなぐ自動ドア  馬の背に日のこぼれ落つ十月  (字足らず)  満月やずゐぶん長い坂上がる  秋日影わつぱ蒸篭の干されあり  どんぐりや谷に流るる祝歌 (銀鏡の祝歌「祝いめでた」)  鳥おどし百十一戸の朝ぼらけ (銀鏡)  秋澄むや父の桐下駄白鼻緒 (祝 父へ)  清流やうす緑なる新豆腐  (祝 母へ)  万緑や筆にたつぷり墨つけて (ひろこさんへ)  柿の花生家の棟札現はるる  新しき墓に朱の文字南吹く  両用のめがね忘るる薄暑かな (5月31日)  モノクロのネガかざしみる五月闇  日の中に黒き畝立つ鍬始  薩軍の越えたる峠夏薊(「五郎ヶ越(ごろんこえ)又は「五郎ん峠(ごろんとうげ)」)  ひよつとことおかめになりぬ一夜酒  村おこしの話ふくらむ新茶かな  ほろ酔いがうたふ寮歌や夏の月

 2012年  

 稲架を組む人の背小さき鬼無里村  体育の日の清水焼の青さかな  みちのくのおおあざこあざあかざかな  夏めくや大きな皿を並べたり  水平に遠くを眺め烏の子  いつの間に卆寿の日なり春満月 (祝・達子さんへ )  百坪の端に芋植う母卆寿  (祝・達子さんへ)  百日ももかなるややこのほつぺ牡丹の芽 (祝・孫へ)  菜の花に下総浄土みたりけり  柿もぐや猪除けの網張り終えて  (9月23日)  隣人の笑顔こぼるるむかごかな  (9月23日 ただあきさんとBBQ)  曼珠沙華歩めば土のやはらかし (9月22日「銀鏡神楽ー日向山地の生活誌」出版記念祝賀会)  朝霧の杜に合祀の神楽かな  (9月22日 銀鏡神社 祖霊祭)  新任の先生のゐて村祭  足裏の白さ自慢の川遊び  谷わたる風のもつるる祭かな  肩幅広き父の日の父よ

 2011年  

 正露丸の染みたる木箱冬の雨  老い母の後ろ手にある冬菜かな  芭蕉忌や見ゆるものあり水の底  新蕎麦や脇往還の水明り  トルソーの肩ににほへる秋夕焼  秋うららミルクキャラメル手から手へ  病院の窓越に見る大花火   (8月13日 術後 利根川大花火)  紫蘇の香や日暮れて空の低くなる  有体に言へば相棒きうりもみ  ランドセルの走れば夏の光かな  俳人のやたら饒舌鶯餅  菜の花や下総起す耕耘機  ドラえもんのシールの跡のあたたかし  菜の花やあやとりの子の祈りの手  わがままを小匙一杯宵の春  節分や一皮脱ぎて鬼となる  水玉の布地に春の立ちにけり   ありさんへ  水温む朝一番の着メール   BUNNさんへ  豆腐屋の跡地にパン屋春めく日  またしても寝癖のままの御慶かな   齋藤嘉久先生を悼む 1月16日 享年87歳  大利根のドン・キホーテに燗酒を  打ち返す電線の影初茜      宮越多加雄さんを悼む 1月9日 享年89歳  教会の屋根の小鳥も冬うらら   冬の日の長きあくびのをはりかな  洗濯の音に始まる三日かな  パンジーのツンツン光る二日かな  風呂吹きやお国訛りの母のゐて  煮凝りや忘れかけたる人に合ふ  山柿や隣の采の分かる村  てぬぐひのほつれごくぼそいわし雲  やまあひの神楽囃子や秋澄めり  (10月「銀鏡神楽習い始まる」)    亡き河野繁弘さんに捧ぐ  座奉行の盆も踊るよ里神楽  ちちははに素足を見せる三姉妹  母の日の母の電話のこそばゆし  下萌えを少女ふんはり越えゆけり